CD-01
イスラエル-1 歌入り編
Israel-1




 イスラエルの曲の中でも、古くから踊られているもので、人気があり、しかも歌の入った作品を選びました。もちろん、どの曲もフォーク・ダンス・バージョンのアレンジですので違和感なく踊ることができます。

01 マイム [ Mayim ]
 踊り方の例(動画)、(動画2)。
 4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルで踊られます。日本で踊られている踊り方とイスラエル本国での踊り方は、ほぼ同様です。アメリカ、ドイツ、中国などでもほぼ同じ踊り方で普及しています。
 フォークダンスの曲の中では、オクラホマ・ミクサー、コロブチカと並んで三種の神器と呼ばれるほどに有名な曲です。やはりこの曲は、22世紀の人々にも体験して頂きたい踊りです。
 マイムとは、「水」の意味です。砂漠地帯において、水を得た喜びの踊りだとする方が多いようですが、この踊りは、聖書の、「神との出会いは、のどが渇いたときに水を得たような喜びです」と告げる言葉からきています。つまり、神への感謝の踊りです。おそらくは、約束の土地、カナン(パレスチナ)に国を得た喜びを表しているものと思われます。
 マイムには、イスラエルの音楽の特徴の一つである、わりこみ小節がみられます。16 + 16 + 4 + 16 という風に 4呼間1小節が割り込んでいます。こういう点でもマイムは音楽的にもイスラエルの代表曲だと言えそうです。
 ホラとは、ルーマニアに住んでいたユダヤ人たちが、シオニズムの時にカナンの土地に持ち帰った踊りです。ルーマニアの民族舞踊であるホラで使われる簡単なステップを繰り返す踊りで、ユダヤの詩とクレズマーの曲に合わせ、シングル・サークルでエネルギッシュに踊りました。イスラエル国建国当時は、新生イスラエルの雰囲気に最も適しており、国民全員が多いに踊りました。
 ホラは、元気で明るい踊りです。ステップは、ほぼランニング・ステップで走る様に踊ります。横に進む時に軽くホップを入れたり、ステップ・ホップの時の上がった足を膝を曲げて高く上げたり、しゃがみこんだり、跳び上がったり、両手を勢いよく挙げたり、素早く回転したり。体育系の踊りですので、体調のいい時は思いっきり踊りたいものです。
 沢山のアーティストが色んなアレンジでこの曲を発表しています。中には、まったく踊り用でないものや、ディスコ調、一部アレンジが異なるバージョンもありますが、ここでは、踊れるバージョンを選びました。ただし、一般の人がよく知るマイム・マイムよりも、曲のテンポが速いです。元々ホラの曲なので、このくらい元気のいい方がマイムっぽく感じます。女性ヴォーカルの曲です。

02 シボレス・バサダー [ Shibolet Basader ]
 踊り方の例(動画)。
 4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。または、カップル・ダンスとしても踊られます。
 シボレット・バサデーとも呼ばれます。ホラの名曲です。ステップとホップだけの組み合わせの踊りですので、初心者でも楽しめます。
 この踊りの背景には、「過ぎ越しの祭り」があります。過ぎ越しの祭りとは、ユダヤ人にとっては重要な祭りの一つです。昔、エジプトにおいて奴隷として虐げられていたユダヤ人たちは、神の導きによってモーセをリーダーとして、約束の地へと向かおうとしますが、エジプトの王ファラオによって妨害を受けます。そこで神はエジプトに対し、10の災いを臨みました。水を血に変えたり、疫病を流行らせたり、イナゴを発生させたりしたのです。そして、10番目の災いは、エジプト人達の長子を皆殺しすることでした。その際ユダヤ人の家には戸口に子羊の血を塗って目印にし、神は通り過ぎたといいます。この事が過ぎ越しの祭りの起源であり、ユダヤ人はこの祭りの時、その年の最初の穀物を束にして聖壇に捧げられました。シボレス・バサダーとは、「穀物の束で満ちた畑」という意味で、この儀式の復活にちなんで踊られる踊りです。
 4/4 拍子の踊りですが、シボレス・バサダーには、イスラエルの音楽の特徴の一つである、わりこみ小節がみられます。 16 + 16 + 16 + 4 +8 という風に 4呼間1小節が割り込んでいます。
 ここでは、歌入りのシボレス・バサダーを選びました。歌が入ることによって哀愁を帯びた曲調に仕上がっています。日本のものより、若干テンポが速いですので、カップル向きかも知れません。

03 ホラ・メドゥラー [ Hora Medura ]
 踊り方の例(動画)。(動画2)。4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 これも簡単な構成のホラです。「キャンプ・ファイヤーのホラ」の意味があります。元気いっぱいに踊ると味が出ます。
 ここでは、男女コーラスの楽しい曲を選びました。

04 クマ・アッハ [Kuma Aha ]
 踊り方の例(動画)。4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 「立て!同朋よ」の意味で、男性に対する言葉がけです。女性に対しては、クミ・アッハと言います。
 昔習った踊り方では、最初のショーティッシュの時に両手を真上に上げましたが、今では肩の高さ位に上げるのが主流ですね。踊り方の例の動画ではVポジションのまま前進、後退しています。また、その後のオープン・バインでは、大阪跳びなどという名前で、3歩目に極端な跳躍を入れる人々がいましたが、私たちは動画の様に通常のオープン・バインで踊っていました。3歩目リープの時に両手を上げるところが元気のしるしです。ラスト・パートでは、円内に行き、スタンプをともなうチェーケシア・ステップで後退しますが、今では、適当なステップで後退している人が多いです。
 他国のフォークダンスでは、作者が「フォーク」であることが多いのですが、イスラエルの踊りの場合は、作者が分かっている曲がほとんどです。ラウンド・ダンスやレク・ダンスと同様に作者がおり、文章やビデオなどで踊り方を残しているケースが多いです。作者が決まっている踊りの場合、作者に敬意を表し、作者の意図の様に踊ることが望ましいと思われます。ただし、構成に捉われると個性を失い、踊り自体のパワーがなくなりますので、その辺りの加減を知ることが重要ですね。
 ここでは、少しゆっくり目の演奏の曲を選びました。

05 レック・レック・ラミッドバー [ Lech Lech Lamidbar ]
 レッフ・ラミッドバールとも言います。4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 「さあ、砂漠に行こう」という意味です。ホラの有名曲で、イスラエルの開拓戦闘青年隊ナハール [ Nahal ] によって踊られていました。現在でもロック・ミュージシャンがカバーする程にユダヤの人々に浸透しています。
 ここでは、音質の良さでこの作品を選びました。

06 ハーモニカ [ Harmonica ]
 4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 ホラの代表曲で、掛け声を入れると盛り上がります。昔から踊られているだけあって、色々と踊り方があります。最初に習った時は、ハーモニカ・ステップの後のステップ・ホップは円周上に行っていましたが、現在は円内向きに踊るのが主流の様ですね。
 ハーモニカ(ハルモニカ)とは、楽器のことで、アコーディオンだという説と金属片でできた打楽器だと言う説があります。

07 シボレイ・パズ [ Shiboley Paz ]
 「黄金の稲穂」の意味で、踊りはホラ系です。シングル・サークルで元気よく踊ります。
 この曲には、イスラエルの音楽的特徴である変則小節が見られます。4/4、 3/4、 2/4 拍子がごちゃごちゃになっています。つまり、8 + 6 + 8+ 6 + 8 + 7 + 8 + 6 呼間の構成になっています。
 ここでは、男女のコーラスによる、可愛らしい曲を選びました。

08 ハヴァ・ナギラ [ Hava Nagila ]
 4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。または、カップルの踊り方もあります。
 踊り方の例。この動画の踊り方は振り付けが日本の踊り方とは別のものです(動画)。こちらはテレビ・ショーでのハヴァ・ナギラです(2分18秒くらい)(動画)。
 ホラの代表曲として、定番中の定番です。イスラエル建国の頃、盛んに踊られていました。意味は、「さあ、愉快にやろう」です。日本では、オールド・ホラ、ニュー・ホラ、デブカ・ジャンプ、ダブル・ホラ、シザースの踊り方が普及していますが、オールド・ホラだけを最初から最後まで踊るのもありです。もちろん、ニュー・ホラだけでもOKです。
 ハヴァ・ナギラは世界的に大ヒットした曲ですので、多くの方が作品にしています。ここでは、ホラを踊りやすいバージョンを選びました。

09 ボ・イティ・エル・ハガリル [ Bo Iti El Hagalil ]
 踊り方の例(動画)。4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 「私と共にガリリの山に行きましょう」の意味です。4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルのホラ系の踊りです。
 ランニングとホップの多い踊りなので、元気を表現したい人、若者向きですね。

10 エレッツ・ザヴァット・ハラヴ・ウドヴァッシュ [ Eretz Zavat Chalav Udvash ]
 「乳と蜜の流れる土地」の意味で、神とユダヤ人との約束の地であるカナン(パレスチナ)を意味しています。
 4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルで踊ります。
 ここでは、短い曲ですが、元気のいいバージョンを選びました。

11 エレッツ・エレッツ [ Eretz Eretz ]
 踊り方の例(動画)。4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 初期のイスラエルの曲は、シオニズムがテーマになっているものが多いのですが、このエレッツ・エレッツもその代表曲です。シオニズムとは、世界中に離散したユダヤ人が、カナンの地(パレスチナ)に帰ろうという運動で、イスラエル建国の大きな原動力となりました。シオニズムをテーマとした曲には他に、マイム・マイム、エレッツ・イスラエル・ヤッファなどがあります。エレッツ・エレッツとは、「国よ、国」の意味です。

12 ヒネマトフ #2 [ Hine Ma Tov #2 ]
 イェメナイトの踊りです(動画)。4/4 拍子、Vポジションのオープン・サークルでおどられます。
 「見よ、何と素晴らしい」の意味です。
 イェメナイトの踊りとは、ユダヤ人離散により、南へと移動し、南アラビアのイェメン地方で定住したユダヤの人々の踊りです。約5万人の人々が、周囲のアラブ人と交流することなく、2500年も昔のフォーク・ダンスをほぼ完全スタイルで伝承してきました。ですから、正統派ユダヤの踊りということができます。
 左右の動きは小さく、膝を柔らかく使って上下動を行うダンスです。全身で振動しながら、手や腕を巧みに使い、胴体を揺らして、肩をふるわせ、膝、足首を柔らかく使って踊ります。
 通常のヒネマトフとは、アレンジが異なるバージョンです。通常は、 A B A C の繰り返しですが、この曲では、A B A C C という風に C のパートが2回続き、この時円内へ8歩入ってイェメナイト、円外に下がってイェメナイトという風に踊られます。私はこの円内に入るパートが好きです。

13 シーリ・リー・キネレット [ Shiri Li Kineret ]
 4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 シリリ・キネレとも。タイトルは、「私のために歌っておくれ、キネレよ」の意味です。4/4 拍子、シングル・サークルで踊ります。
 この曲は、歌入りの方がお勧めです。

14 アト・ヴァアニー [ At Va'ani ]
 踊り方の例(動画)。
 4/4 拍子、Wポジションのシングル・サークルで踊られます。
 イェメナイトの踊りです。スナップのあるなし、イェメナイト・ステップの方向、手の振り方などに地方差、サークル差を感じます。心温まる音楽と易しい振り付けですので多くの方々に踊り継がれるといいですね。
 日連紹介の曲も素敵ですが、こちらの歌入りバージョンもいい感じです。「貴方と私」というタイトルにふさわしくロマンチックに、女性と男性、そして演奏のみの部分がいい感じでアレンジされています。

15 タアム・ハマン [ Ta'am Haman ]
 6/8 拍子。シングル・サークルで踊る踊り方とプロムナード・ポジションで踊るカップル・ダンスがあります。
 タアム・ハマンとは、「マナの味」の意味で、マナとは、モーセ一行が出エジプトの際、食料に困って飢えた時に、神が与えた絶妙の味のする食べ物のことです。よってマナの味とは世にもまれな美味しいものの意味であり、それをキスの味に譬えたのがこの歌です。
 歌入りのタアム・ハマンは数曲ありますが、どれもフォーク・ダンス・バージョンとはアレンジが異なり、踊り方を調整する必要があります。ここで紹介する曲は、フォーク・ダンス・バージョンと同じアレンジですので違和感なく踊ることができます。

16 ドロール・イクラ [ Dror Yikra ]
 踊り方の例(動画)。4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 イェメナイトの名曲ですね。意味は、「自由の叫び」です。

17 ツァデック・カタマル [ Tzadik Katamar ]
 踊り方の例(動画)。
 意味は、「正しい者は栄える」です。旧約聖書の「詩篇」92篇の「正しい者はなつめやしの木のように栄え、レバノンの香柏の様に育ちます。彼らは主の家に植えられ、われらの神の大庭に栄えます。」からの引用です。
 ハシディックの曲の中でも、多くのダンサーに踊られている曲です。初心者から、熟練者まで楽しめますので、パーティーや例会での足ならしの定番となっている様です。
 ハシディックの踊りとは、18世紀ごろ東ヨーロッパに起こったハシディック教の人々の踊りです。ハシディック教とはユダヤ教の正統派の一派のことで、ハシディック教では、音楽や踊りによってトランス状態に入ることにより、神に近付くことができるという教えがあり、熱心な信者たちは、ひたすら簡単なステップで踊り続けました。だんだんと音楽に酔い、踊りに酔って、喜びの内に恍惚状態に入っていく様は、酔っぱらいの踊りの様にも見えます。決して格好よく踊るダンスではなく、踊る宗教的なダンスです。
 「ン・チャ・ン・チャ」という一拍一拍にねばりのあるリズムに合わせ、一歩一歩を踏みしめる様に上下動しながらステップします。腰を落として膝をゆるめ、上体を少し後ろに反ったスタイルです。信仰色の強い踊りで、祈りのポーズや聖書を読むポーズ、神様ステップなど、実に特徴のある動きが振りつけられています。
 現在ではあまりハシディック・スタイルで踊ることは少なく、ホラと同様のスタイルで踊られることが多いようです。
 ハシディックは、トランス系の踊りですので、長時間にわたって踊ると味が出ますが、恍惚感を味わえる程に踊り続けることは少ないですね。
 発表されている作品数は、マイム・マイムに匹敵するほどに多く、歌入りも数曲あります。ここでも、歌入りを用意しました。

18 ロー・アハヴティ・ダイ [ Lo Ahavti Dai]
 踊り方の例(動画)。(動画2)。4/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 ハシディックの元気のいい踊りです。
 音質の良さでこの曲を選びました。最後は、何度も繰り返し Bパートを歌ってますので、この曲で踊られる時はご注意を。

19 イェヴレヘハ [ Yevarechecha ]
 ハシディックの名曲です(音楽)。
 意味は、「あなたが祝福されますように」です。ハシディックの人々が踊る場合は、みんなが同じパターンを踊るのではなく自由にはじけて恍惚感に満ちて踊ります(動画)。
 ゆっくりとした曲調から徐々に速くなるパターンの曲です。このバージョンとは別にインストゥルメンタルの曲もあり、人気は二分していると思います。

20 シール・アル・エッツ [ Shir Al Etz ]
 「木の歌」の意味です。3/4 拍子、Vポジションのシングル・サークルでおどられます。
 イスラエルの音楽には三拍子のものは少ないのですが、少ないながらも、イェデッド・ネフェシュ、ライラ・ライラ、エレッツ・イスラエル・ヤッファなど、どれも美しい曲ばかりです。このシール・アル・エッツも非常に美しいメロディーであり、人気のある曲です(動画)。
 シール・アル・エッツは、日本には3つのバージョンが紹介されています。ここでは、男性ヴォーカルの曲を選びました。どの曲も素晴らしい出来なのですが、このバージョンが一番音質が好いのが選考理由です。それと、パーティーなどでこのバージョンがあまり使われていないので選んでみました。