CD-03
ギリシャ -1 ナショナル・ダンス編
Greece-1 National Dance




 ギリシャのナショナル・ダンスは、ハサピコス(ハサポセルヴィコス、シルタキ)、シルトス、カラマティアノス、チャミコス、そして、ゼイベキコスです。ゼイベキコス以外は日本でも踊られていますが、ブルガリアやマケドニアの踊りの様に人気のある踊りではありません。アルゴス・ハサピコスが、ある程度パーティー・プログラムに入っている位です。
 

01 ハサピコス 1 [ Hasapikos ]
 踊り方の例(動画)、(動画2)。
 ハサピコスは元々東ローマ帝国のコンスタンチノープル(現在のイスタンプール)の肉屋たちの踊りでしたが、現在ではギリシャのナショナル・ダンスとして定着しています。なお、現在ではこの遅い方の踊り方をハサピコスと呼んでいますが、この踊り方が起こったのは近代であり、昔はハサピコスといえば、下記のハサポセルヴィコスのことを指していました。
 日本では、アルゴス・ハサピコスが有名ですが、ギリシャではあまり踊られていません。というより、アルゴス・ハサピコスは振り付け師の作品のため、その講習を受けた人々しか踊れません。ベーシック自体が違っています。若干の違いはありますが、ナショナル・ダンスとしてのハサピコスのベーシックは、踊り方の例の(動画)の動きです。この動きを覚えた方がギリシャで通用すると思うし、ハサピコスの醍醐味を味わえると思います。
 ここでは、ハサピコスを2曲紹介しています。どちらも特徴のある音楽であり、ハサピコスを気持ちよく踊れることと思います。

02 ハサピコス 2 [ Hasapikos - Strosse To Stroma Sou ]
 ストロッセ・トゥ・ストロマ・ソウ。
 いかにもハサピコスといった感じの作品です。

03 ハサポセルヴィコス [ Hasaposervikos ]
 踊り方の例(動画)。(動画2)。
 ハサポセルヴィコスとは、ハサピコ+セルヴィコスの合成語で、セルビア風のハサピコの意味です。上記のゆっくりとしたハサピコスが起こるまでは、こちらをハサピコスと呼んでいたそうです。
 ハサピコとは、トルコ語で肉屋の意味であり、コスタンチノープルを中心に中央アジアやバルカン地方に普及し、その地方の色に染まり伝承されました。それが、ブルガリアのカサプスコ・ホロ、マケドニアのカサプスコ・オロ、レスノト、セルビアのカサプスコ・コロ、アラブのダブキー、イスラエルのホラなどです。
 また、この曲では、速いハサピコ = グリゴロ・ハサピコ [ Grigoro Hasapiko ] も踊られています。
 ここでは、ハサポセルヴィコスを2曲紹介しています。この#03 のハサポセルヴィコスは、歯切れのいい演奏であり、のりがいいので、ハサポセルヴィコスを踊るのに最適だと思います。

04 ハサポセルヴィコス・メドレー [ Hasaposervikos Medley ]
 ゴルゴナ+ギツォニッツァ+ペラ・ストン・ペラ・カンボス [ Gorgona + Gitsonitsa + Pera Cambus ] の3曲のメドレーで、日連紹介曲の元曲です。日連では、ペラ・カンボスのところをソースタ(飛び跳ねる踊りのこと)で構成されていました。
 本来ハサポセルヴィコスは、構成の決まっている踊りではなく、ネバー・オン・サンディーの様にリーダー・コールによって踊りを選んで踊られます。パーティーなどに行くと、各パートを4回づつで、A-B-C・・という風に順番も決まっていますが、最初から最後までベーシックでもいいわけです。日本人はフリーに弱いので難しい話かもしれませんが・・・。

05 カラマティアノス 1 サミオティッサ[ Kalamatianos - Samiotisa ]
 踊り方の例(動画)。
 シルトスとほぼ同様のベーシックを持つ踊りですが、音楽がシルトスが2/4 拍子に対し、7/8 拍子であることが異なります。日本ではなぜか、2/4 拍子のカラマティアノスが紹介されましたが、これは非常に珍しい曲であるといえます。むしろ、シルトスに分類した方が混乱を避けるのではと思ってしまいます。
 カラマティアノスは、ペロポネソス半島で起こった踊りで、ペロポネソス半島南部のカラマタ市の名をとっていると云われています。ギリシャでは非常にポピュラーな踊りで、結婚式などで盛んに踊られている様です。アテネ・オリンピックの閉会式においても、ギリシャの結婚式を表現するシーンでカラマティアノスが踊られていました。
 ベーシック・ステップは踊り方の例(動画)をご参考にどうぞ。リーダーは、メンバーを引き連れて踊るとともに、様々なヴァリェーションを繰り出します。これは、ギリシャにおいては、教会等の広場で踊り始められ、パワーが高まったら広場を離れて村中を踊りまわり、メンバーのパワーが弱くならない様にリーダーがメンバーに活を与えるためにリーダー・ヴァリェーションが行われたことによります。村では、リーダーは激しいリープ、スクワット、ジャンプ、ターン、スラップなどを、踊りの進行中演じ続けます。そしてリーダーが疲れたならば、リーダーはリーダーの証であるハンカチーフを左の人に渡し自分はチェーンの一番後ろに付きます。新しいリーダーは、力強くリーダーの役割を演じ、疲れたらまた次の人へとリーダーの座を譲ります。こうして次々とリーダーを変えながら踊りのパワーを持続して、村中を巡って元の広場へと戻ります。
 つまり、ギリシャにおいてカラマティアノスは、本来は宗教的儀式が土台にあります。
 また、ハンカチーフを渡して主役が変わっていく方法は、バトン・リレーやオリンピックのトーチに影響を与えています。
 カラマティアノスの中には、有名なマンチリ・カラマティアノスがありますが、今回はそれ以外の曲を5曲選びました。このサミオティッサは踊りやすいのでお勧めです。歌入りです。

06 カラマティアノス 2 ミロ・モウ・コキーノ [ Kalamatianos 2 - Milo Mou Kokkino ]
 少しゆっくり目のカラマティアノスです。
 カラマティアノスは、リーダーが大いに活躍する踊りです。ハッスルしたい人、元気一杯の人、目立ちたい人はぜひ リーダーになり、多彩なテクニックを披露されるといいと思います。そんな時、メンバーは冷たい視線ではなく、笑顔で彼、彼女を声援して上げて下さい。踊りが大いに盛り上がりますよ。

07 カラマティアノス 3 アステラキ・フォティノ [ Kalamatianos 3 - Asteraki Fotino ]
 こちらは少し速めのカラマティアノスです。男性のヴォーカルが入っています。

08 カラマティアノス 4 [ Kalamatianos ]
 リズムカルなカラマティアノスです。男性のヴォーカルが入っています。

09 カラマティアノス 5 [ Kalamatianos ]
 のりのいいカラマティアノスです。女性のヴォーカル入りです。4分21秒という曲の長さは初心者には長く感じるかもしれませんが、カラマティアノス好きにとっては心地よい長さです。私の中では、特にお気に入りの一曲です。

10 シルタキ 1 [ Syrtaki ]
 ハサピコスには、ゆっくりとしたヴァリ・ハサピコスと速いテンポのグリゴロ・ハサピコス、そしてハサポセルヴィコスがありますが、シルタキとは、それらのハサピコスのメドレーのことを言います。
 これは、私の大好きなシルタキです。演奏が踊り心を奮い立たせますよ。

11 シルタキ 2 シコ・ホレプセ・シルタキ [ Syrtaki 2 - Siko Horepse Syrtaki ]
 踊り方の例(動画)。
 人気のシルタキです。歌が入っています。「さあ、立ってシルタキを踊ろう」みたいな意味ですね。

12 シルタキ 3 ゾルバ [ Syrtaki - Zorba ]
 踊り方の例(動画)。
 映画「その男ゾルバ」で非常に有名になった音楽と踊りです。作曲はギリシャの有名な作曲者である、ニコス・カザンザキス氏です。まるでシルタキの代名詞的踊りですので、フォークダンサー以外の方でもご存知かと思います。アテネ・オリンピック閉会式でも一番盛り上がった曲でした。

13 シルトス 1 オパ・ニナ・ニナ・ナイ [ Syrtos - Opa Nina Nina Nai ]
 踊り方の例(動画)。
 トルコの曲が原曲といわれているオパ・ニナ・ニナ・ナイです。カラマティアノス・バージョンとシルトス・バージョンがありますが、ここではシルトスを選びました。
 シルトスとは、4/4 拍子であることがカラマティアノスと異なりますが(カラマティアノス=7/8)、ベーシック・ステップはほぼ同様の踊りです。SQQのSの部分がカラマティアノスよりも長いため、少しのんびりしたイメージになります。
 オパ・ニナ・ニナ・ナイは女性の歌のものが普及していますので、ここでは男性コーラスのものを選びました。

14 シルトス 2 オ・イリオス・ヴァシレヴィ・スタヴローラ [ Syrtos 2 - O Ilios Vasilevi Stavroula ]
 ゆっくりとした素朴なシルトスです。男性の歌入りです。

15 シルトス 3 タシア [ Syrtos - Tasia ]
 やや速いテンポのシルトスです。

16 チャミコス 1 イティア [ Tsamikos - Itia ]
 踊り方の例(動画)。
 チャミコス、ツァミコス、チャミコ、ツァミコなどの表記があります。名称は、チャム・アルバニアの人々(チャミデス)に由来しています。チャミコスは、ギリシャ独立戦争中に、アルバニアとの国境付近のイピルス地方の山のゲリラ(クレフテス)が、全ギリシャに広めた勇壮な踊りです(独立は1821年)。アルバニア、イピルスのチャミコスがナショナル・ダンスとして広がったわけですが、それぞれの地方で様々なチャミコスが踊られており、また、古い時代のチャミコスと新しいチャミコスもあります。
 大きく分類すれば踏みしめるように踊るタイプと軽く弾むように踊るタイプ(ピディヒトス・タイプ)があり、現在では軽く弾むタイプが主流です。また、5小節単位、6小節単位、8小節単位のチャミコスがあります。
 より伝統的なチャミコスの場合、リーダーが大いに活躍します。リーダーはメンバーを引き連れ、全員でチャミコスをひとしきり踊ったら、一旦踊りを中止させ、リーダーだけがヴァリェーションを踊ります。リーダーが絶え間なく即興的なヴァリェーションを繰り出している間、メンバーはリーダーの踊りを見守ります。
 クレフテスの衣装は、フスタネーラ [ Foustanella ] と呼ばれる沢山のプリーツの入ったキルト・スカートですので、チャミコスもフスタネーラを着て踊られます。
 この曲は日本ではチャミコスの代名詞的感のあるイティアです。ただし、チェーン・ダンス界で踊られている「イティア」はピディヒトス・タイプであり、テンポが速いのですが、ここでは少しゆっくりしたイティアを紹介しています。イティアとは、「柳」の意味があります。女性のヴォーカル入りです。

17 チャミコス 2 アルカディア・ダンス [ Tsamikos - Arcadia Dance ]
 リズムが小気味いいチャミコスです。

18 チャミコス 3 [ Tsamikos ]
 ライブでのチャミコスの歌です。素晴らしい演奏です。

19 チャミコス 4 [ Tsamikos ]
 楽器演奏によるチャミコスです。

20 ゼイベキコス:ゼイベキコ・ティス・エヴォドキアス [ Zeimbekikos - Zeimbekiko tis Evdokias ]
 踊り方の例(動画)。
 ゼイベキコスは、ギリシャの伝統的な即興の踊りです。世界中、ギリシャ人のいるところではゼイベキコスが踊られます。本来は男性舞踊でしたが、近年は女性も踊ります。
 酒場などで、ゼイベキコスの9拍子の音楽が演奏されると男の一人が立ち上がり、おもむろに踊り始めます。基本的なパターンはなく、ほぼ自由に彼は踊ります。音楽が終わり、踊りが終わっても誰も彼に拍手をしないし、彼もまた拍手を求めません。
 映画「ネバー・オン・サンディー」に、このようなシーンがありました。ゼイベキコスを酒場で踊った後、素直に感動したアメリカ人の旅行者が彼に拍手を送りました。すると、踊った彼は激怒し、俺は俺のために踊っているんだ、拍手はいらない、と怒鳴りました。ゼイベキコスとは、そういう踊りです。
 ゼイベキコスは、トルコのゼイベク [Zeybek]という踊りに由来し、2人の男が戦うさまをあらわします。また、1人で踊るときには、獲物を狙うワシの動きにも見立てられます。ギリシャは、古代の高い文化を継承して、文化的には誇り高く、長いローマの支配時にも、文化はかえってローマ人を圧倒しました。踊りにおいても、他国の影響は少なく、ゼイベキコスは、その少ない一例です。
 残念ながら私は、まだゼイベキコスを踊ったことがありません。音楽も踊りも好きなタイプですので、ぜひ習いたかったのですがこれまで機会がありませんでした。
 かなり多くのゼイベキコスの音楽がありますが、ここでは私の最も好きなゼイベキコ・ティス・エヴドキアスを紹介します。